論文盗用など「学者のモラル」が厳しく問われた事例 −新聞報道から−
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1994年6月23日 朝日新聞
日体大前学長が博士論文で他人の論文無断引用 筑波大、学位取り消す
日本体育大学(東京都世田谷区)前学長の稲垣安二教授(63)が学長在任中に執筆し、筑波
大学(茨城県つくば市、江崎玲於奈学長)に提出した博士論文が、「他人の論文の無断引用」と
して、筑波大学は1990年に授与した学位を今年5月30日付で取り消していたことが分かっ
た。
稲垣教授の論文のテーマは「デプスジャンプの運動学的特性」。デプスジャンプは台から飛び
降り、再び台に飛び乗る動作を繰り返し、筋力を強化するトレーニング方法で、同論文はバスケ
ットボールのリバウンドをとって再びシュートする動作で研究した。
筑波大によると、論文は89年12月に同大学体育科学研究科に提出された。主査ら6人の教
授、助教授で構成する専門委員会で審査され、90年3月下旬に教育学博士号が授与された。
筑波大学内で「盗作」のうわさが流れ、今年3月25五日になって稲垣教授から学位返上の届
け出があり、大学が調査した結果、「無断使用があった」ことが判明した。
指導教官だった主査は稲垣教授に複数の論文を参考文献として渡したが、「似ている部分はあ
ったが、問題はない」と大学の調査に答えたという。同大では今後、論文審査基準の見直しも含
め、主査についても何らかの対応をとるという。
○盗用したとは思わぬ
稲垣安二・日本体育大教授の話 指導教官に「これを使って書きなさい」と資料二編を渡され
た。デプスジャンプの基礎的部分について、指導教官が書いてくれたものだと思っていた。いま
でも盗用したとは思っていない。だが、同じ内容の論文があると指摘されたため、結果的には申
し訳なかったと思い、学位返上を申し出た。